映画『嘘を愛する女』ネタバレ感想〜あなたの目に長澤まさみはどう映る〜

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こんにちは。織田(@eigakatsudou)です。

1月20日に公開された長澤まさみ主演の『嘘を愛する女』を観に行きました。
監督、脚本は中江和仁。

「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM」の第一回でグランプリを受賞した企画が映画化されました。年末からTSUTAYAでよく宣伝を見た方も多いのではないでしょうか。

『嘘を愛する女』のスタッフ、キャスト

監督:中江和仁
脚本:中江和仁、近藤希実
川原由加利:長澤まさみ
小出桔平:高橋一生
木村(キム):DAIGO
心葉:川栄李奈
綾子:野波麻帆
マサコ:黒木瞳
海原匠:吉田鋼太郎

あらすじ紹介

世話好きな研究医の恋人・小出桔平(高橋一生)と5年にわたって同居している食品メーカー勤務の川原由加利(長澤まさみ)。ある日、桔平がくも膜下出血で倒れて寝たきりになってしまう。さらに彼の運転免許証、医師免許証が偽造されたもので、名前も職業もうそだったことが判明。彼女は探偵の海原匠(吉田鋼太郎)と助手キム(DAIGO)に桔平の素性調査を依頼する。そして桔平が執筆中だった小説が見つかり、そこから瀬戸内のどこかに桔平の故郷があることを知る由加利だったが……。

出典:シネマトゥデイ

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。




映画のネタバレ感想

以下、作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

題名の『嘘』とは何か?

登場人物を含め簡単な導入部分から紹介します。

川原由加利(長澤まさみ)

食品メーカーに勤める。ヒット商品を生み出し、前年のウーマン・オブ・ザ・イヤーに輝いている。口うるさい部長や能力の低い部下にフラストレーションを持つことも。仕事後には取引先?などとの飲み会に行くこともしょっちゅう。

自分でも自覚してるようですが、自己中心主義で自信家。あと基本的に謝ることをしません。

小出桔平(高橋一生)

研究医。東日本大震災の日に駅で気分の悪くなっていた由加利を介抱し、後に同棲。ロボットの模型が好き。バイトほどの収入しかない、とは由加利談。

ある日、くも膜下出血で倒れ、昏睡状態になってしまいます。彼の所持していた医師免許証や運転免許証、小出桔平という名前は偽物でした。由加利からの呼ばれ方は「きっちゃん」。

海原匠(吉田鋼太郎)

私立探偵を営む。由加利の同僚(野波麻帆)の親戚。由加利から桔平の調査を依頼される。帽子の色合いと読んでいる新聞記事からヤクルトファンと思われる。名前の読み方は「かいばら」。

キム(DAIGO)

海原の探偵事務所で働く助手。パソコンのロック解除や、指定された時間で捜査資料を上げたりと有能。たまに余計なことを口走ります。

喋り方でDAIGOと気づきました。

ココハ(川栄李奈)

由加利の部屋のポストを覗く、桔平と何か関わりがありそうな女性。由加利を度々挑発します。

嘘、それはイコール桔平

上で書いた通り、タイトルの「嘘」は小出桔平という男が嘘で塗り固められていたということですね。その桔平を愛する女として由加利が挙げられています。

由加利は彼の「嘘」の部分を愛してたのではなく、ここでの「嘘」はイコール小出桔平でしょう。

これから観る方は注目してみてください。




海原の愛車はFIATのPanda

桔平の手がかりを探そうと瀬戸内にやってきた由加利と海原。2人は海原の愛車に乗って取材を重ねます。

左ハンドルのこの可愛い車はフィアット社のパンダというそうです。検索してみましたが旧型の模様。海原は相当愛着を持って可愛がっていますが、由加利はただの足としての車としてしか見ていません。

このあたり由加利と海原のセンスの違いが垣間見えますね。『0.5ミリ』では安藤サクラが坂田利夫の愛車のボロ車を大事にしていましたがそちらの方が珍しいんでしょうか。

途中でパンクした車があっさりその後に走っていたのはびっくり。

川栄李奈の口が素晴らしい

桔平のことを何か知っていそうな女・ココハを演じた川栄李奈の口元にも注目です。

ニマッという擬音がしそうな口角の上げ方と口のすぼめ方。まあこれがあざといこと。それでもココハのキャラクターと服装から自然に感じます。

彼女は最初全く言葉を発さず黙秘か?という感じでしたが、桔平のことになるとニマ〜ッととろけるような表情になります。笑う目元はもちろん、口元が幸せそうなオーラを解き放ちます。口角の上げ下げで感情をダイレクトに伝えるのが上手ですね。>

川栄はキャラを選びそうで、意外とマルチロールなのかなと。メインキャラとしてもっと長い時間観ていたかったです。ぜひ注目してみてください!

長澤まさみが誰かに似てる?

主演の長澤まさみは昨年30歳を迎えました。16歳で初主演した『ロボコン』、24歳時の『モテキ』と比べると確かに年齢の積み重ねを感じます。

本作では髪型もあいまって、長澤まさみがシーンによっては新垣結衣に、そして小泉今日子に似てるなと思いました。

眉毛でしょうか。それとも髪の分け方でしょうか。僕の目の錯覚でしょうか。ちなみに小泉今日子にそっくりだったのは回想シーンで池を背に顔をくしゃっとさせて笑っているシーンです。



あなたは由加利を許せますか?

まずは主人公の自己中心的な性格について。

この作品の由加利(長澤まさみ)は独善的です。恐らくそうやって抵抗勢力を押しのけて食品メーカー内でのし上がり、ウーマン・オブ・ザ・イヤーになったのでしょう。仕事に対する自信あふれる口ぶりは、時に過信に聞こえます。

社長のスケジュールを変更させておいて(リスケと作品内では言っていましたね)、新商品のプレゼンに遅刻。しかもドアを開けるなり、「メディアへの発表は、私が」と。

いやいや、先に普通わびの言葉だろ、と思っていたら案の定、上司がその旨を指摘し、「お前、何か勘違いしてないか?少し休め」と痛烈な一言。

社長にプレゼンしていたのは親友の野波麻帆で、彼女との仲も亀裂が入ったことを匂わせるシーンでした。厳しすぎる社内措置でしたが、それだけ由加利のことを疎ましく思っている人は多かったのでしょう。

この遅刻は、桔平の遺した小説を分析して手がかりを探すことに没頭し、眠ってしまったことによるもの。ある意味こちらも大仕事です。

とはいえ、仕事とプライベートをきっちりと分ける彼女らしくない大失敗でした。

あんたと5年も一緒にいた奴の気が知れねえよ

仕事を休み、瀬戸内までやってきて調査をする由加利。

思い立ったら即行動。有能な人が成功の秘訣で言いそうなことですね。

横浜の探偵事務所からマイカーで出発し(どこから乗ったのかはわかりませんが)フェリーで瀬戸内に到着した海原(吉田鋼太郎)に対しても「お疲れ様」の労いの一言もありません。これは海原に好意がないとかではなく、単純に彼女の性格だと思われます。

合理的かどうかはさておき、かたっぱしから聞き込みを続けて情報を得ようとする根性は大したもの。町の居酒屋にも一人で潜入し、飲んでいる人たちに話を聞きます。

その後泥酔、嘔吐し、店主(黒木瞳)の部屋に泊めてもらっていましたが、起きた時に由加利が言った「すみません」はこの作品で唯一の謝罪だったかもしれません。

海原もその情熱に突き動かされ瀬戸内の町の人々に頭を下げて、聞いて回ります。丁寧に相手の気持ちを損ねないように質問する姿は、探偵ってコミュニケーション能力が必要なんだなと思わせられます。

実はいいヤツな海原のPandaの助手席に乗り調査を続ける由加利でしたが、ある旅館で別部屋が取れずに同部屋で一夜を過ごすことになってしまいます。

まあ一杯飲もうやとお酒を開ける海原に対して、由加利は隣に敷いてあった海原の布団と荷物を窓際に投げ棄てて明確に男女を意識して拒否感を示しました。

「この宿泊費も(調査費用として)私が出してるんだから海原さんは車ででも寝ればいい」

…気持ちはわかりますけどね。言い方ってものがありますし、ココハ(川栄李奈)にセックスレスと指摘された時の対応も含めて、どうも男慣れしてない部分が滲み出ていました。

しまいには取材途中で桔平の過去を突き止めることにびびったのか、海原に非協力的な態度をとるようになります。

そんな由加利に向かって、海原は彼女の荷物を車から放り出し(旅館の逆ですね)痛烈な一言を吐きます。

「あんたと5年も一緒にいた奴の気が知れねえよ」

依頼人と探偵という客商売の立場とはいえ自己中心的な態度を取り続ける由加利に向かって、彼にもプライドがあります。
その後一人になった由加利はヒールを脱いで桔平との出会った日に想いを馳せて再び海原の元へと戻りました。

知らない土地で足を使って探すのにパンプスを履いてくる由加利は、少しバカなのか己のプライドの表れなのかと判断しかねましたが恐らく両方でしょう。海に裸足で入った後にちゃんと足は拭いたんですかね。

桔平の過去を知り、東京に戻った由加利は病室の桔平に「やりたいことリスト10」を語りかけます。泣きながら3つまで言う由加利でしたが、残念ながら僕には滑稽に映ってしまいました。結局最後まで自分の話ばっかりでしたね…

この独善的な女を愛することができるか、感情移入できるかが『嘘を愛する女』を楽しめるかどうかの鍵になりそうです。イラっとする女がキャラクターコンセプトになっているのだとすれば、演じた長澤まさみには拍手です。

良かったところ、悪かったところ

この映画の良かったところは、由加利と海原が調査を進めていくところでしょう。道中でタバコを吸うシーンなどは、序盤の由加利の伏線の引き方も上手でした。

由加利が海原に「コナンの小五郎おじさんみたい」と言って海原が「ヘボ探偵じゃねえか」と返すあたりはとても良いです。確かに小五郎のおっちゃん、よく子供たちを乗せて運転してますよね…

あと海原は桔平のことを一貫して「あんた(由加利)の旦那」と呼びます。由加利と桔平は結婚していなかったので本当は彼氏という関係だと思いますが、ここも海原の優しさかと。

瀬戸内の人に桔平との関係を問われた由加利が逡巡の末に「妻です」と言い切ったシーンは良い伏線の回収でした。

探偵の助手・キム(DAIGO)はデータ解析に優れていて、まるでコナンの灰原哀ちゃん。哀ちゃんは鼻の穴を広げて寝たりしませんが…

直接捜査には参加しなかったココハはもったいなかったなと思いました。製作側が由加利とこの二人の関係をそれほど広げたくはなかったんでしょう。

そこにいない恋人の人生の足取りを探っていく映画には『瞬』や『僕の初恋をキミに捧ぐ』といった作品があります。

本作も同様に回想シーンを使いながら在りし日の桔平を観る人に提示していきますが、やはり説明の要素が強かったですね。

桔平を演じた高橋の魅力は活かせていたと思います。頭に入ってきたかは別にして、会話シーンでセリフの少ない部分をフォローしようと小説を桔平に読ませたのも彼の人となりを提示したいという演出でしょう。

吉田鋼太郎の海原が素晴らしかっただけに、あまりに由加利にフォーカスしてしまったかなというのが正直な印象です。

楽しいところと残念なところが半分ずつ。

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