映画『ちはやふる 上の句』ネタバレ感想〜負けるな机くん〜

ちはやふる 上の句 タイトル画像
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こんにちは。織田(@eigakatsudou)です。

2016年の映画『ちはやふる 上の句』を鑑賞しました。末次由紀のコミックが原作で、脚本、監督は小泉徳宏が担当しています。

主演には広瀬すずを配し、野村周平、真剣佑が脇を固めました。

競技かるたに青春を捧げる瑞沢(みずさわ)高校かるた部の第1章。この後後編(下の句)、完結編(結び)へと繋がっていきます。

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。



『ちはやふる 上の句』のスタッフ、キャスト

監督・脚本:小泉徳宏
原作:末次由紀
綾瀬千早:広瀬すず
真島太一:野村周平
綿谷新:真剣佑
大江奏:上白石萌音
西田優征:矢本悠馬
駒野勉:森永悠希
須藤暁人:清水尋也
木梨浩:坂口涼太郎
若宮詩暢:松岡茉優
宮内妙子:松田美由紀
原田秀雄:國村隼

あらすじ紹介

競技かるたに打ち込む高校生たちの青春を描き、コミックス既刊29巻で累計発行部数1400万部を突破する末次由紀による大人気コミック「ちはやふる」を、広瀬すず主演で実写映画化した2部作の前編。主人公・千早を演じる広瀬のほか、野村周平、真剣佑らフレッシュな若手俳優が共演。監督を「カノジョは嘘を愛しすぎてる」の小泉徳宏が務めた。幼なじみの綾瀬千早、真島太一、綿谷新の3人は、新に教わった「競技かるた」でいつも一緒に遊んでいた。新の競技かるたにかける情熱に、千早は夢を持つことの大切さを教わるが、そんな矢先に新は家の事情で遠くへ引っ越してしまう。高校生になった千早は、新に会いたい一心で「競技かるた部」創設を決意し、高校で再会した太一とともに部員集めに奔走。なんとか5人の部員を集めて競技かるた部を立ち上げた千早は、全国大会を目指して練習に励む。

出典:映画.com

本記事はストーリー上のネタバレを含みます。
『ちはやふる 結び』の前に『上の句』を観ようかなと思っている方で未見の方はご注意ください。

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映画のネタバレ感想

以下、作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

かるた部をつくりたい!

はじめに記しておくと『ちはやふる 上の句』は青春映画の傑作だと思います。
部活を立ち上げるには5人以上の部員が必要で、それをクリアするために奔走する主人公・千早。このあたりのハードル突破は『僕は友達が少ない』と似ているところがありますね。

ただし、部活創設の障壁に時間を割きすぎることなく、部となってからはかるた競技と部員の人間ドラマの描写に注力した印象です。

映画の冒頭で千早は少年誌の表紙を飾るモデル?の妹という触れ込みで話題になります。姉役の写真は広瀬すずの実姉・広瀬アリスなんですが、この後出てくることもなくそれっきり。

野村周平が演じる真島太一も「家は金持ち、成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗」と導入部分で謳われますが『上の句』『下の句』にてその続きは描かれません。

太一が抱く淡い恋心を除いては、かるた部に関係ない要素を取り除いた構成。これが青春映画として本作品を評する大きな理由です。

百人一首の奥深き世界

競技かるた。
用いられるのは小倉百人一首です。

100枚の内からランダムに抽出した50枚を使い、お互いの目の前に25枚ずつ並べて取り合っていきます。使わなかった50枚を読み手はもちろん読むことがあり「空札(からふだ)」と呼ばれます。

日テレの公式サイトに競技かるたのルールがわかりやすく説明されているので、こちらもどうぞ。

この作品の一年後の公開となった『劇場版名探偵コナン から紅の恋歌』でも述べましたが、僕の地域は小中学校の授業で百人一首を学んでいました。
奏(上白石萌音)が最初にびっくりしていたように、競技かるたは反応と暗記力が前提として求められ、歌の意味を味わったりする余裕はあまりありません。最初の文字に反応して札を取っていくゲームです。

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2017年4月25日

本作ではかるたの競技性を追求しつつも、百人一首の背景に思いを巡らす奏というキーパーソンを使って五・七・五・七・七に込められた歌の意味も丁寧に紹介しています。

これもまた素晴らしい。

田子の浦にうちいでて見れば白妙の
富士の高嶺に雪は降りつつ

小倉百人一首4番の山部赤人の歌も登山のシーンを用いて登場。文学の要素もしっかり取り入れています。

オープニングの映像技術も歌が時代を巡り巡って流れているようでとても気持ち良いですね。
また、実家が呉服店を営む奏の入部条件となった「着物で大会に参加」というファクターも見逃せません。千早がつくったポスターの着物の合わせが逆と突っ込んだり、奏の起用は百人一首の文化的観点を大事にしているなと感じさせてくれました。

タイトルとなっている「ちはやふる〜」の札を瑞沢高校の面々が絶対に取るぞ、という得意札になっていくのも部活らしくて好きなシーン。

瑞沢のメンバーたち

『ちはやふる』の最大の魅力はやはり青春としての部活動、かるた部を構成するメンバーの魅力でしょう。

千早の一心不乱なかるた愛、太一の複雑な恋心、「肉まんくん」こと西田(矢本悠馬)の明るさ、情趣深い奏、そして机にかじりついている「机くん」こと駒野(森永悠希)

経験者の千早、太一、西田の3人と初心者の奏、駒野とは当然ながら実力に差があります。いわゆるガリ勉の駒野は、かるたに慣れるまで、勝てるようになるまで時間がかかりました。というか、駒野は恐らく勝利を味わったことのないまま『上の句』はエンドロールに向かいます。

捨て駒としての位置に甘んじる現状への苛立ち。成長スピードに対する焦り。才能が全くないのではないかという不安。

自分を必要だと言ってくれた仲間。新しい世界に飛び込み、手にした絆。笑い合い、時に涙することのできる居場所。

駒野の中で巡る葛藤はとても純粋で、だからこそ痛くこちらに突き刺さります
『下の句』と合わせると駒野は一番悔しさにまみれ、歯を食いしばり、目に見える成長を遂げるキャラクターと言えるかもしれません。

時に心無い言葉を発する千早と西田も駒野との毎日を経て人間的に成長していきます。

また、太一は千早、新よりも才能や運に恵まれていないことを自覚しているからこそ、駒野の痛みを理解し、奮い立たせたのでしょう。
冒頭でも述べた「完璧なカースト上位の男子高校生」に見える太一が抱える劣等感。彼のもがく姿は実に人間じみていて、この作品を一段上に引き上げています。

主人公の女の子に淡い恋心を抱き、一方で彼女との実力差や才能の差を認識している太一。幼なじみの新とも同様。どこか、かるたに対して本気になれない自分を歯がゆくも仕方なく思っています。

でも彼は部長という立場であり、部員をモチベートしたり、千早をコントロールしたりしなければいけません。『ちはやふる 下の句』でも彼のあがく毎日は続いていきました。

ハイスペックに見えながら、本当に勝負したいところでは自信を持てないイケメンくん。千早という存在がいるだけに才能の違いがあらわになる現実が時に残酷です。

「肉まんくん」の西田を演じた矢本悠馬もお見事。一見するとお調子者に映りながらも、実力的には千早の次を担う存在で、試合では頼れる立場です。
『君の膵臓をたべたい』の「ガム君」でもそうでしたが、彼は口元をニヤッとさせて相手を受け入れるところが本当に上手ですね。

西田も当然ながら「もっと強くなりたい」という思いはあるはずです。それでも、向こう見ずに突き進む千早や太一を見守り、時にはその行き先を修正していきました。
相互に支え、相互に上へと引っ張る瑞沢かるた部。最高の仲間たちですね!

都内の強豪校・北央学園を上手に用いて、チームとしての団結性を描いたのも見事でした。
北央の須藤を演じた清水尋也も久しぶりに見ましたが、競技へのリスペクトと勝利への執念が同居する良いキャラクターでした。

後編、完結編まで一気に観た結果、個人的には『上の句』が一番インパクトが強かったです。
繰り返しますが素晴らしい青春作品の金字塔。まだ観たことのない方は是非!瑞沢かるた部のみんなと一気に駆け抜けてほしいと思います。

『ちはやふる 下の句』の感想はこちら

『ちはやふる 結び』の感想はこちら

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