映画『湯を沸かすほどの熱い愛』ネタバレ感想〜ポニーテールの杉咲花が良いです〜

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2016年に公開された『湯を沸かすほどの熱い愛』を鑑賞しました。

中野量太監督が脚本も担当。商業映画デビュー作となり、数々の賞も受賞しました。

主演の宮沢りえと、娘役を演じた杉咲花は日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞と助演女優賞を受賞。

2016年の邦画を代表する作品の一つとなりました。

色々な人におすすめされて、観てみたいなと思っていた作品です。



『湯を沸かすほどの熱い愛』のスタッフ、キャスト

監督・脚本:中野量太
幸野双葉:宮沢りえ
幸野安澄:杉咲花
片瀬鮎子:伊東蒼
酒巻君江:篠原ゆき子
滝本:駿河太郎
滝本真由:
向井拓海:松坂桃李
幸野一浩:オダギリジョー

あらすじ紹介

1年前、あるじの一浩(オダギリジョー)が家を出て行って以来銭湯・幸の湯は閉まったままだったが、双葉(宮沢りえ)と安澄(杉咲花)母娘は二人で頑張ってきた。だがある日、いつも元気な双葉がパート先で急に倒れ、精密検査の結果末期ガンを告知される。気丈な彼女は残された時間を使い、生きているうちにやるべきことを着実にやり遂げようとする。

出典:シネマトゥデイ

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以下、ネタバレを含んだ感想となります。

映画のネタバレ感想

以下、作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

導入はシングルマザー?

幸野双葉(宮沢りえ)は娘の安澄(杉咲花)と二人暮らし。

銭湯を営んでいましたが、夫の一浩(オダギリジョー)が蒸発したようで、休業しています。

安澄は地元の高校に通う二年生。
クラスで女子からいじめを受け、制服を絵の具でぐちゃぐちゃにされたりしました。

「頭が痛いから休みますって先生に言ってよ」と家を出るのを渋る安澄。

どうせ学校に行っても嫌な思いするだけですからね。

絵の具をパレットにぶちまけたいじめっ子たちは、安澄の描いた絵を塗りつぶすつもりだったんでしょうか。

やることが小学生以下というか…高校生にもなって、ああいういじめってあるんですかね。結構引きました。

いじめを把握した双葉でしたが、学校に行きたくないという安澄に「逃げちゃダメ」と諭します。

安澄は自己防衛の本能から登校拒否(=逃げ)を望んでいるわけですけど、それを精神論的に否定するのもなかなかキツいものがありました。

安澄の汚れた制服を洗い、夜遅くまで丁寧にアイロンをかけた翌朝、双葉はパート先のパン屋で倒れます。

脳まで転移した末期がん。

余命2、3ヶ月の宣告を受けた彼女は残された“家族”のために、やるべきことを設定し、一つずつ実行に移していきました。

その一つが探偵(駿河太郎)に依頼して、蒸発した夫の一浩の居場所を突き止めること。

現住所を知った双葉は、彼の連れ子もろとも一浩を強制帰還させました。

あふれる要素と足りない結論

本作品は余命を宣告された双葉の終活の他にも、色々な境遇を描いています。

血の繋がっていない母親、産みの母親、孕ませる男、シングルファーザー、そしてその子供たち。

加えて耳が聞こえない君枝(篠原ゆき子)というキャラクターも用いました。前述したように安澄にはいじめという要素もつけています。

この映画にのめり込めなかったのは、様々な困難または傷を背負った人間たちについて何を描きたかったのかがわからなかったことです。

登場人物たちは余命数ヶ月の双葉に吸い寄せられるように、彼女に関わっていきました。

でも宮沢りえが演じる双葉に残念ながらそれほどの魅力は感じられず、ヒッチハイクで双葉の車に乗り込んだ拓海(松坂桃李)に至ってはその存在意義さえ不要に感じました。

安澄、鮎子(伊東蒼)と3人で旅行に出た双葉は道中のPAでヒッチハイク中の拓海に乗せてほしいと頼まれます。

その後少しお互いの身の上話をしただけで、彼女は拓海を抱き締めます。

なんだこの違和感は。

もちろん意味合いとしては彼のヒッチハイク人生を激励したんだと思うんですけど、すぐそばに娘がいるわけです。夫も家にはいるわけです。

ちょっと意味がわかりません。

悲劇的な設定は必要だったのか

さらに「旅から戻ったら報告にうかがっていいですか」とか、のたまう拓海も意味がわかりません。

いい歳こいて男たらしですかね?それとも全てを包み込む慈愛ですかね?

探偵(駿河太郎)への対応も含め、男に対して潜在的に緩いものがあるように感じられました。

彼女が八方美人なのだとしたら、それにホイホイ捕まる彼らも彼らです。

麻痺症状が出る末期がん患者に運転させる夫もどうかと思います。子供が同乗してるわけですからね。

悲劇的に描きたくないという気概は買いますが、その都度都度で圧倒的な非常識を感じました。常識が欠けてるのではなく、非常識。

ラブホの話を娘たちの前でする男のところに彼女たちだけを置いてトイレに行く双葉もそうです。

双葉に買ってもらった初めてのブラジャーとパンツを、いじめに抵抗する勝負下着として披露した安澄のシーンもそうです。

夜に病院で人間ピラミッドをして叫ぶシーンもそうです。

「このシーンを撮りたい」という欲が先行しているように見え、リアリティさもメッセージ性も僕は感じられませんでした。

登場人物たちの血縁や境遇についてはただ扱っただけという感想。

安澄と鮎子がよくできた娘なのでいつの間にか双葉に懐いていましたが、やっぱり「その血縁の要素は必要?」と思ってしまいます。



娘役2人は大奮闘

最後に良いところも挙げていきます。

日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞を受賞した杉咲花はよく頑張っていました。

双葉が入院して以降の働きぶりはまさに一家の柱で、作品内で一皮も二皮もむけた強さを印象付けました。

下着姿になっていじめっ子たちに打ち勝った“その後”の学校生活を見てみたかったり、キャラクター設定における疑問点はありました。

それでも、血の繋がっていなかった母親を一番支えていたのは安澄でした。手話や髪の縛り、料理など安澄の所作には丁寧な伏線が施されていた点も注目です。

床に伏す双葉の足元でシーツを掴みながら、涙を見せずにうつむいて話すシーンは圧巻。

なんで顔を見て話さないのかなと思っていたら、直後に映された双葉の表情で全てを悟りました。

ここは脚本や撮り方もとても上手かったですね。

一浩の連れ子としてやってきた鮎子は、双葉や安澄とはもちろん、一浩とも本当に血が繋がっているのかわからない状況でした。

彼女にとって幸野家は他人の家であり、転がり込んだ当初は当然ながら壁をつくりました。

双葉からの自分に対する愛情と、安澄に対する愛情を比較するような鮎子の視線が印象に残ります。

この映画で一番良かったところは双葉、安澄と旅行に行くことが決まった鮎子が、家の外でタバコを吸う一浩に報告に行くシーン。

どこか恥ずかしそうにしながらも嬉しさを隠せない様子で、カニを食べに行くと伝える伊東蒼はとっても上手かったです。

あの空気感はきっと鮎子と一浩の父子の間だけのものなんでしょう。

一度玄関に戻った鮎子が、今度は大きい声で「ごはん!」と一浩に伝える直後の場面も合わせて良かったと思います。こちらは幸野家の家全体に向けたセリフですね。

双葉と安澄の間に特別な空気感があるのを知った一方で、鮎子にも父との間だけに流れる時間が見えたようで嬉しかったです。

この映画は御涙頂戴の典型的なストーリーとは異なるものの、その異質性に逆に御涙頂戴を感じてしまいました。

狙いすぎというか。

主人公の双葉を好きになれるかどうかが、作品を好きになれるかの鍵になりそうです。

 

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